わかってるこの恋は実らないって。




「背中」










最初に出会ったのは昼下がりのバー。
ふと私の目に飛び込んできたアイツの背中が
泣いてるようにみえて


凄く気になった。






「…隣いい?」
そいつの横の椅子を指差す。
訝しげな顔で私を見上げる顔。

「…他にも席が空いているのではないか?」
そっけない態度。むかつく。
私は横をやめて向かいの席にどっかと座った。
…あからさまに嫌そうな顔しないでよ。
「私っていうの。アンタは?」
頬杖をついてそいつの顔を覗きこむ。
ふいと目を逸らされる。

私はソイツの顔を持ち無理矢理こっちに向けた。
「!?ちょ…っ何をする!!」
「アンタの名前は!?」
困惑してるそいつの顔をキッと睨んだ。


「…バルドー……」


かなり呆気にとられた顔でうわ言のように呟かれた名前。
「そ。バルドーね。いい名前じゃない」
私は顔から手を離し微笑んだ。
バルドーは驚いた顔のままだった。
その後すぐに辛そうな淋しそうな顔に戻ったけど。


それが出会い。
一度もバルドーの笑顔を見れなかった出会い。




なんでバルドーがそんなに辛い顔をしているのか事情は知らなかった。
あいつは言ってこないし私も聞きたくない。


でも確実にアイツは私の中に棲みついた。










「バルドーだよね?おいっス」


次に会ったのは次の日の夜。
苦痛に歪んだ顔で町を闊歩するアイツを見かけて声をかけた。
私の声に反応してゆっくりと振り向くバルドー。
その時のアイツの濁った力のない瞳が
何故か私のココロを捕えて離さなかった。


バルドーのココロが泣いてる気がして


私のココロも共鳴して泣いてる気がして




何も言わず抱きしめて




何も言わず唇を重ねた。














泣いてるココロを忘れるかのように


泣いてるココロを癒すように


バルドーと私は何度も重なった。






「っは……バ、バルドーぉ…」
後ろからバルドーの力強い腕に掴まれ激しく身体を揺すられる。
その激しさに熱に溺れそうになる。
「ひぁっ…も…ダメぇ」
身体を戦慄かせて身をそらせるとそのまま掴まれて
バルドーの前に座る体勢になった。


「あ…ぅんっ」
より深くバルドーを受け入れるその体勢に耐えられなくて
私が身体を震わせる度バルドーは
その大きな太い腕で抱きしめてくれた。


二人の体液でシーツもお互いの身体も汚れていた。
そしてその感触だけが現実味を帯びていた。
他は全て夢のような錯覚に見まわれて何も考えられなくなる。


「あっ…やだぁ…バルドー…バルドーぉ…っ」
意識が落ちそうになって強くバルドーの首にしがみついた。
バルドーの熱を呼吸を全身で感じる。
その感覚だけでもイキそうなくらいに。


「…っ…」


私の耳元でうわ言のようにバルドーの口から紡がれたその名前。
と同時に私のうなじに流れる一筋の熱い水。


聞いた事のあるその名前でバルドーの素性も
その泣いてる理由も何もかもわかった。




私達背中を見てるんだね。






そっと身体を離し眼前にあるバルドーの両頬に手をそえた。
バルドーは辛そうな顔で私の顔を見ている。
頬の温もりと涙の熱が私の手に伝わる。


今この時だけは私を見てくれてる。


他の女を想って泣いていると気付いても
またすぐに誰かの方を向いて
私に背中を向けられるとわかってても
この温もりが私を包んでくれるから


だから微笑む事ができる。






……」
私の顔を見て目を見開くバルドー。
知らず知らず私の頬を伝う涙。
「ははっ…初めて名前言ってくれたね……」
涙はゆっくりと流れて笑顔の下へ落ちていく。
バルドーはゆっくりと私の涙を人差し指で奪い取った。
私はその手にそっと両手を重ねた。


その温もりにアナタの戸惑う優しさを感じるから
涙がどんどん溢れてくる。


私は俯いて声を殺した。
私とバルドーの手に雫はポタポタとこぼれていく。






アナタはあの人の背中を見て


私はアナタの背中を見て




永遠に振り向いてもらえないその背中に
狂ったように恋焦がれて






私にとってアナタとのこの短い時間がアナタを忘れるための
支えになるから……だから…




もう少しこのままで………













エロくねぇ…!!!(ガビーン)
でも楽しく書きました。てへ。


「今、バルドー夢書いてるんです」と、満奈様に言われた日の衝撃(笑)マジでっか?と、思いながらも、
オリキャラ「バルドー」気に入ってもらえて、結構嬉しかった記憶があります。
コレを頂いた日、バルドーに対しての鬼設定…ちょびっと、後悔しました。
「バルドーが、姫をあれほど愛していなければ…あそこで、死んでいなければ…
ヒロインに、いつか、答えることが出来たはずだ」と、思います。

満奈ちゃんvどうも、ありがとうv







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