棘 2
「眼をあけてごらん、」
どれだけの時が流れたのだろう、私は知らないうちに、泣き疲れて眠ってしまったらしい。
眼をあけるとそこには、私を抱きしめて、真剣な眼差しで私を見つめるおにいちゃんの顔が、あった。
瞬時に思い出される記憶が、また私の瞳から涙を落とす。
唇をかみ締めて、我慢しようとするのだけれど、涙は止まらない。
零れでる涙は、おにいちゃんの眼にどう映るのかなんて、考えることのできないほど、子供だった。
「泣くな。」
おにいちゃんの唇が、私の涙を吸い取る。吸い取っても溢れる涙は、終わらない。
酷いことをさせてしまった私に、おにいちゃんは、あまりにも優しすぎた。
もう抑えきれない。私は、言ってはいけない言葉を言ってしまった。
おにいちゃんの唇をさけ、胸元に顔をうずめ、迸る想いを唇から吐き出した。
「愛してる。もう、我慢できない。私は、おにいちゃんが好きなの。愛して、を嫌いにならないで」
心からの叫びだった。兄と妹。どうにもならない世界。忌み嫌われる近親相姦。
私が、自ら犯されるシチュエーションを仕立て、おにいちゃんを堕とした。
私が、頑なに『無理矢理』にこだわったのは、自分を正当化するため……。
犠牲者のふりをして、“私は、悪くない”と、思い込みたかっただけだった。
愛しているのに、どうして酷いことが、人は、できるのだろう。
私は、自分の中にある心が、酷い腐臭を放ち、おにいちゃんに気づかれ、嫌われないうちに、
おにいちゃんを、自分と同じ、いいえ自分より下の位置に陥れようとしたのだ。
レイプ魔という私の中での最低の位置に。
どれだけ涙を流そうが、私の罪は消えない。消えないと思っていた。
なだめるようなおにいちゃんの手は、私を退けなかった。一瞬の緊張が伝わるおにいちゃんの腕が、
私をきつくかき抱いた。心の中に、小さな希望が湧いてきた。
あいかわらずおにいちゃんは無言だったが、おにいちゃんの胸に顔を埋める私の耳は
高まるおにいちゃんの鼓動を感じていた。少なくとも嫌われてはいないのだと、感じたかった。
おにいちゃんの手が私の顔を引き上げ、舌先が、まだ乾くことを知らない泉を舐めとり、嗚咽をあげる私の口を、
おにいちゃんの唇が、おさえこんだ。
私の中にある自己嫌悪そして罪の意識が、おにいちゃんの唇を避けようとするが、おにいちゃんの腕は緩まず、
私は小さく首を振った。
「いやぁ、おにいちゃん。ごめんなさい……ごめ……んっ、んっぅぅ……」
突然訪れた変化、零れる言葉を封じ込めるような荒々しいキスに、益々、私の罪の意識が、暴れる。
口角を変え、私の口をこじ開け、侵入する舌は熱く力強く、私の舌を絡み取る。
身をすくめ、ぶるぶると震える私に、おにいちゃんの力が抜け、荒々しいキスは、優しく誘うキスに変わってきた。
いったん引き返すおにいちゃんの舌先。おにいちゃんの唇が、私の唇をついばむように軽くあわせては離れる。
私を閉じ込めていた腕は解かれ、くりかえされる淡いキスとゆっくり私の髪をすき頬を撫でるおにいちゃんの指先は、
優しかった。
優しい抱擁に、私の心は高まり、もしかしてもしかしておにいちゃんは私を愛してくれるかもしれないという思いが
唇から伝わってくる優しさ、髪から伝わってくる慈しみに、引きずり出され、緩やかな海の中で漂うように溢れでた。
おにちゃんの顔に浮かぶものが、蔑んだものでなく、愛しむものであることを願う私は、固く閉じていた瞳を開けた。
目の前のおにいちゃんの顔は、どちらも浮かんでいなかった。いつものおにいちゃんの顔だった。
瞳を開けた私に気づいたおにいちゃんの顔が、ちょっと変わった。いつものちょっと良いことがあったときに見せる、
にやりとした笑い顔。読みきれない表情に瞬時に心が閉じていき、慌てて引き返そうとしたとき、
おにいちゃんの唇が割れ、赤い舌先が、私の唇を舐めた。
胸がきゅんと苦しくなった。おにいちゃんの舌先がちゅろちゅろと私の唇を、『あけてごらん』と誘った。
恐る恐る開きかけた唇を、おにちゃんの舌先が、そっと割る。決して無理にこじあけず、私の意志に任せるようにそっと動く舌先。
どきどきした。心の中にあった感情の渦は、混乱の極みを通り越し、私の心は愛されたいと思う一人の女でしかなくなっていった。
少しつづ、おにいちゃんの舌先の侵入を許す私の唇は、いつしか完全に開かれ、おにいちゃんの舌先が、私の舌に届いたときに
軽い呻き声が漏れた。
痺れるような感覚が私を満たし、身を起こされ、セーラー服をするっと頭から抜かれ、乱れたブラをそっと
はずされたときも、なにも考えれず、ただ愛撫されたいだけだった。
乳房を這うおにちゃんの手、乳頭を軽く擦る指が、愛おしさを伝えてくれた。
スカートを脱がそうと、おにいちゃんの指が肌から離れるのをいやがり、自ら、おにいちゃんの腕の中に倒れ込んだ。
何も考えれない私の唇は、溢れる想いをおさえこもうとするが、快感を伝えるおにいちゃんの唇が許さなかった。
ぬちゃぬちゃと、舌の絡まる音が響く。意味のない呻き声が、私の唇から漏れた。
おにいちゃんの舌が急に私の舌を解放した。鼻をくんくんと鳴らし、声を我慢しうめく私に、おにいちゃんが耳元で囁いた。
「、声を聞かせて」
おにいちゃんの囁きは、私の煽った。きゅっと奥深いところが収縮していく。
耳元に置かれた唇は、そのまま耳たぶをかすり、軽く挟み込んだ。くちゅりという音が、私の耳を捉え離さない。
「っんぐっぅ……」
「、聞かせて」
抑揚のないおにいちゃんの声、それでも、私の乳頭を転がし、乳房を揉まれる心地良さは変わらずの優しさに溢れ、
私をどんどん高めていく。零れ始めた喘ぎ声は、意味を為さず、徐々に私を解放していった。
「ぅっくぅ……おにい…ちゃん……あぅっ…んっ」
一度発してしまった言葉は、もう、元には戻らない。私の唇からは、おにいちゃんを求める言葉しか出てこなかった。
耳たぶを甘噛みし、耳のうしろから首筋をかすめながらおりてくるおにいちゃんの唇。強弱をつけ揉まれる乳房。
さまようおにいちゃんの唇は、私の望むところまでやってこない。じれったいほどのスローテンポで、私の鎖骨を舌先が舐めた。
感極まり涙が零れた。先ほどまでの狂いそうな自己嫌悪の涙ではなく、自分でもなんでだかわからない涙だった。
さまよう唇は私の涙を吸い取り、一瞬のうちに望む場所に移動した。
おにいちゃんの唇が、私の痛いほどにぴんと尖った乳頭を咥え、舌が舐めあげ、歯がこする。
「んっひゃん」
繰り返される乳頭への愛撫は、私の心をとろとろと蕩けさせていった。もう、嬌声はおさえれなかった。
上半身を撫でる手が、乳頭を愛撫する舌が、どんどん私をさらけ出していった。
私の身体が切なさのあまり、どうにかなってしまうのではないかと、思ったとき、熱いおにいちゃんの手が、はじめて
私の腰から下に、ためらいがちにおりていった。思わず緊張し力が籠る足を、ゆったりと撫でるおにいちゃんの手。
決して、無理に閉ざされた内股に、入り込もうとせずに、ただ腰からおしり太ももを行き来する愛撫。
私は、ほっと緊張が緩んだ。私の秘処は、おにいちゃんの指を求めてしっとりと濡れていた。
触られたいと思う心と、最初のセックスの恐怖が、私の中でせめぎあっていた。
おにいちゃんのゆったりとした愛撫は、先ほど感じた恐怖を薄めていき、私の内股は自然に開かれていった。
触られたい想いが、だんだんと大きくなっていったのだが、内股に滑り込むおにちゃんの手は、私の想像をはるかに超え
早急すぎた。
「ひっ、いやっ!怖い!」
がちがちと鳴る歯は、止められなかった。ぎゅっと内股が閉ざされた。
「痛いの、いやぁ……」
あの痛みあの恐怖が、私を一瞬支配したが、おにいちゃんの指先は、軽くかすめただけで、去り、周囲をなではじめた。
それでも止まらない震えを吸い取るように、おにいちゃんの唇が私の口をふさいだ。
くりかえされるキスと、一瞬見たおにいちゃんの瞳に溢れるものが、私を落ち着かせ、じりじりと迫る指先を待ちわびるようになった。
「ひっくっ…ぅうう、ぁっあ、ん……」
もうもう触って欲しいと、おにいちゃんに許しをこいたかった。
「、背伸びなんてしなくていいんだ」
おにいちゃんの呼びかけは、私の口の緩ませた。
「おにいちゃん、もう許して」
「。俺にどうして欲しい」
「…触って……ほ、しぃ……」
途端におにいちゃんの指先は、私の秘処に、浅く差し込まれた。
びくっと硬くなる身体をなだめるように、一方の手がわき腹を撫であげるが、唇が、荒々しいキスを仕掛けた。
撫でる手の優しさと、入り込んだ指のゆったりとした動きが、私にすすり泣きをあげさせた。
荒々しいキスが、おにいちゃんが高ぶりを堪えているのを伝えてきた。伝わってくるおにいちゃんの優しさが、私の緊張を解き
徐々に、おにいちゃんの愛撫を受け入れていった。
「、濡れてる」
「ぃやっ」
「クククッ、どうしてイヤ?可愛い」
一瞬、びくりとなり、フラッシュバックが襲いかけるが、『可愛い』という言葉と、
軽い笑いを含んだおにいちゃんの声は、私を許してくれているようで、私の内股の力は抜け落ち、おにいちゃんの足が割り込むのを許した。
「くぅ……おにいちゃん…ぁうっ……」
おにいちゃんの指が緩い動きで出し入れされるたび、奥がざわめきとろとろと愛液を吐き出した。
くちゅくちゅと音が溢れる。音に羞恥を煽られ、私の頬は染まっていき、私の瞳から涙が溢れた。
「泣くな、」
軽い強弱をつけ、おにいちゃんの差し込まれている指とは別の指が、合わせ目をこすりあげ、花芯を探しあてた。
「ひっぐぅぅぅうっ、あっぁあん、だっ、だって……私た…」
「だからなんだ?止めれるのか?俺には無理だ。もう戻れねェ。戻る気もねェ」
私の言葉を遮り、吐き出されたおにいちゃんの言葉は、私を突き放した。
「ぁあ……ん、おにいちゃん……ごめんなさい」
弄られ狂わされた私の秘処はひくつき、おにいちゃんのモノを欲していた。まるで狂わしてしまったのは私だと、責めるように。
狂った関係。狂わしてしまった関係。おにいちゃんの愛撫を受けながら、もう引き返すことなどできない。私の罪はどこまで
いくのだろう。消せない罪の意識は、確実に、私の身体に刻み込まれていった。
「、の中に入れたい」
おにいちゃんの指が引き抜かれ、秘処の合わせ目に、おにいちゃんの強張りが擦り付けられた。
私の奥は喜び、新たな愛液を滴りはじめ、おにいちゃんが合わせ目にそい、上下にすりつけるとぬるぬる絡みついた。
「…………痛いの、いやぁ」
心拍数は急上昇していく。私は、思わず腰を引き、涙目で、必死に、おにいちゃんを思いとどませようとした。
あの痛みが、怖かったから。もう一度受け入れる行為は、私への罰のように感じていたから。
「だめ、もう限界。入れる」
「いやぁー!」
おにいちゃんの強張りが、ぐっと押し付けられ、先が、ちょっぴり入ってきた。
「いたぁい、いやぁー!うぐっ、ど、どうして……さ、さっきより、くっ、いっ痛いの」
「、さっきのは指2本。俺のじゃねェ」
徐々に腰を押し付けてくるおにいちゃんの強張りは、さっき味わったものとは比べようもなく大きく感じ、
痛さのあまり私は、上に逃げた。『指2本』さっきのアレは指2本。
驚愕の事実に呆然とした。指2本がアレだけ痛いなんて。
逃げる腰をおにいちゃんの手が押さえつけ、強張りが挿入されるのが、分かった。
「ひぃっ!ぁあっ、……おにいちゃん。っう、はぁっういやぁいたい!抜いて」
「くっ…まだ、半分しか入ってねェ。、力抜け」
私の中は、ぎちぎちでぱんぱんなのに、まだ半分だなんて、これ以上の痛みがあるなんて、信じれなかった。
おにいちゃんは、私の足を俗に言うM字開脚にし、上へと逃れる術を封じ、残りを一気に怒張を沈めた。
メリメリッと、抉じ開けられ、ブツリッと大きな音が、私の奥から聞こえた。
「ぎゃっん!…いっいたい!!!いたいよぅ……うっぐう、うっ」
「くっ!きつうぅ。全部入ったよ」
「、好きだ。の全てを俺にくれねェ」
私の頭の中は“痛い”と、“コレがおにいちゃんの”で埋め尽くされ、痛さに喘いでいた。
おにいちゃんの唇から零れた『好きだ』『全てを俺にくれねェ』が、脳裏に届いたとき、私の秘処は、震え、
罪の意識が、解放されていった。
私から仕掛けた罠に堕ちたのではなく、『おにいちゃんが私を求めているうえでのコト』と思うと、心は、高揚していった。
「、ごめん、動かしてェ」
「あっ、ぐぁっ……だめ、動いちゃいやぁ」
「、力抜いてみろ」
「痛くねェように、ゆっくり動くから」
「、可愛い俺だけの」
言葉をあまり発しなかったおにいちゃんが、饒舌に、話しかけてくる。
『好きだ、全てを俺にくれねェ』という言葉にしがみつき、『俺だけの』に、蕩けだす。
私の秘処は、自然に力が抜け、おにいちゃんの抽送を受け入れていった。
睦言を吐かれるたびに、奥がじんじんと痺れだし、痛みが抜けだしていく。
画面の向こう側の男たちが吐いた言葉と同じような言葉なのに、愛しい人からの囁きは、こうも違うものなのか。
男たちの言葉は、私を暗い淫靡な世界へ陥れ、心を薄汚れさせるだけだったのに、
おにいちゃんの唇から私に捧げられる言葉は、私をおにいちゃんのいる場所に連れ戻し、
薄汚れた心から、一枚一枚澱んだベールを剥ぎ取り、ただおにいちゃんを愛する私にしていった。
心の牢獄にためていた想いは、確かに、おにいちゃんに伝わり、受け止められた。
あいかわらず私の秘処は、おにいちゃんが抽送するたびに、軋むような鈍痛を感じたが、
溢れる想いを受け止め、私のバカだった行為を責めず、慈しみを持って、導いてくれたおにいちゃんの想いがしみ込み、
身体の痛みとは比べようもないほど、心は満ち足りていた。
ちょっとづつ、慣れてきた秘処の奥が、おにいちゃんのモノが擦れるたびに、疼きだしてきた。
私の痛みに呻く声に、艶っぽい嬌声が混じるようになり、おにいちゃんが、嬉しそうなあの独特の笑顔を、
私に投げかけた途端、私の奥はじゅんと潤んだ。私は、あの顔にとても影響されるのだ。
「クククッ、、ちょっと楽になったみたいだな。奥がほぐれてきた」
「もう少し、速くしていいな」
コクコクと頷き、引きがちだった腰をほんの少しだけおにいちゃんの腰に近づくように動かしてみた。
よりいっそう深く、私の中に呑みこまれるアレが、奥をぐっと押す。速くなったリズムが、身体の奥から
自慰のときに感じるような気持ちよさを、引き出してきた。
「ぁあんっん……おにいちゃ〜ん」
甘ったるい声が自然に出てしまい、私の頬は朱に染まった。
「、感じてきたか?きもちいい?」
ふんふんと荒い息で鼻をならし、おにいちゃんの瞳を真っ直ぐに捕らえると、高ぶりを我慢するおにいちゃんがいた。
「、くっそっ悪ぃ、俺もっもたねェ」
「の中、良すぎ」
まだ軋む秘処が、どうにかなりそうなほど激しくなった抽送は、私をどんどん気持ちよくしていった。
おにいちゃんの息遣い、激しさを増す腰使いが、一瞬、私を高みに持ち上げた。
「ひっ!おにいちゃん!ぁあっん!!」
「、愛している。ずっとこうしたかった!イク、イクよ!」
おにいちゃんの『あいしている、ずっとこうしたかった!』が、耳に届いたとき、私は、白い世界を見た。
最奥は打ち込まれた怒張を逃そうとせずぎゅーーっと収縮した。ふっと舞う感覚が訪れ、吐き出されたスペルマが、
最奥にびしゃっと浴びせられるのを、確かに感じた瞬間、私は、甲高い声をあげ、イった。
ビクッビクッと、数回に分けて吐き出されるスペルマに、私の奥は満たされていき、私の意識は高みを漂い、
ゆっくりと、おにいちゃんの元に降りてきた。
ひくひくと小刻みに身体が震えた。おにいちゃんの強張りは、私の中で少しつづ小さくなっていく。
ひくつきながら見上げた愛しいおにいちゃんの顔から、ぽたりと汗が足れてきた。
私をじっと見つめるおにいちゃんの瞳は、私の声を待っているようだった。
私は両腕をおにいちゃんに開き、抱きしめてくれるよう誘った。
「おにいちゃん、愛してる」
おにいちゃんは、笑いながら私の上に身を沈め、肌の密着した胸が汗でぬめった。
「、愛してるよ」
私たちの腕は、お互いを抱きしめるためのものとしか、考えられなかった。
おにいちゃんの身体から私の身体に落ちて交わる汗は、おにいちゃんの私への愛を伝えてくれているようだった。
初めての時、あのまま、バックから犯されてもおかしくなかったのに、そうしようと思えばできたのに、
無理矢理犯さず、私を愛を持って抱き合うセックスに導いてくれたおにいちゃんの想いが、嬉しかった……。
私たちは、兄と妹。どうにもならない世界。忌み嫌われる近親相姦。
だからなんだというの?
私は、おにいちゃんを愛している。
おにいちゃんに愛されることが、私の生きる意味……。
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