きまぐれな微笑み 5
鬱積する思いを抱える二人をクルーが完全に持て余す頃、やっと、次の島影を見つけた。
見張り台に立つウソップが、大声を張り上げた。
「島が見えたぞーーー!!!」
♪しまだしまだ!きゃほ〜い♪
新しい島に、冒険心の湧きあがるのを抑えきれないルフィは、仲間のげんなりとした顔を気にもせず、はしゃぐ。
つられたように、チョッパーも踊り出した。
どうしたことか、いつもなら“島に上陸してはいけない病”のでるウソップまでも、小躍りしていた。
そんなウソップのさまを見て、サンジとロビンは顔を見合わせ、尋常でない不穏な空気が、いかにGM号に充満していたかを思いやった。
ナミは、ちらりと横に立つに視線を投げ、その場にいないゾロの姿を求めて、あたりを見渡した。
ぱっと見渡しただけでは、分からない位置にゾロはいた。
の視線を避けるように、みかんの木の根元からゾロの緑の頭が顔を覗かせている。
ゾロの視線は、真っ直ぐにに向けられていた。
ナミがゾロに気がついた瞬間、ゾロはふんと鼻を鳴らし、おれはそんな女には気はねェとばかりに、そっぽを向いた。
そんなゾロの態度に、ナミはぴんとくるものを感じ含みのある笑みを浮かべる。
――ここは私が人肌脱がなきゃね。
にやりとしたナミに、気がついたロビンが、お節介な航海士さんねと言いたげな微笑みを浮かべた。
二人のアイコンタクトに気がついたものは、誰もいなかった。
「さてと、島に着いた心得は?ルフィ?」
「冒険だ!」
「違うでしょ!!!」
ごっとナミのこぶしがルフィの頭に落とされ、懇々と目立つ行動はするななど、諸注意を与えるが、
「いや!おれは冒険だ!」
「あ〜もう、ルフィーーー!!!仕方ないわね」
ナミの注意を聞き流し、ルフィは我先に飛び出していった。
「サンジくんは食料調達、ウソップ荷物持ちね。あっ!チョッパーもついてく?」
「お〜〜し!サンジ、今日はとことんお前に付き合ってやる!まかせとけ!」
前日のサンジの童貞告白から妙な親近感を持ったウソップは、ナンパにだって付き合う気満々で胸を叩く。
なにより、辛気臭い顔のゾロから離れれるのなら、なんだってする覚悟だった。
「おれもサンジと行く!」
チョッパーも同じ気持ちで鼻水をたらしながら大慌ててナミの言葉にのった。
「ロビンと私もショッピングにいってくるから、はお留守番、お願いね」
「ええ、いいわよ」
前の島から子飼いの証を捨て逃げ出したこと、もしかしたらこの島にもあの元締めの手があるかもしれないと懸念する
は、喜んで船番を引き受けた。
「一人じゃ心配だから、あの朴念仁も置いてくから〜後はよろしく!」
「えっ!!ちょっと、ナミさん!!!」
「あっ」
ゾロも置いてくと聞かされて、サンジは慌てた。
ゾロの童貞喪失のチャンスだ。自分を出し抜くチャンスを与えてしまうのは、なんとも言いがたいものをサンジのなかに生んだ。
は、一人っきりでやる行為を思い描いていた。ナミの言葉は、そんなふくらんだ思いを粉砕し、なおかつ
別の意味の思いを呼び起こしていった。
「なに、サンジくん、。私の命令が聞けないてーの?」
「……分かりました」
サンジは不満だったが、ナミには逆らえなかった。ナミのギロリと睨む鬼顔と心なしか微笑む口元に、
二人を何故残すのか悟り泣く泣く諦めた。
――童貞喪失のチャンスなんかくれてやらー!!つか、おれは……ああああ、クソッ!!!
一人ジレンマに悶えるサンジを尻目に、の視線は、その場にいないゾロを探しだした。
そんなに、ナミがしれっとした顔で、みかん畑を指差した。
「あいつ、寝てるから、気にしなくっていいわよ」
「そうね……」
「なんなら言いたいこと、この際だから言っちゃえば?すっきりしたいでしょ」
にこりと笑うナミに、この場は感謝するべきなのか、余計なお世話だと言うべきか
が迷ううちに、クルーは散り散りに船を下りていった。
は、二週間あまりの禁欲生活に疲れきった心をほぐしたかった。
一人になるチャンスだったのに、この二人だけの時間で『何とかしなさい』と匂わせたナミのお節介を、
は心なしか恨めしく思った。
それでも、このチャンスはチャンスと決心し、は、みかんの根元で昼寝をするゾロに、そろそろと近寄っていった。
「ゾロ?起きてる?」
ゾロの胸に手を置き、揺すってみるが、高いびきをかくばかりでゾロは起きない。
ぎゅっと鼻をつまんでみるが、ふがふがと口で苦しそうに息を吸うだけで、起きない。
つまんだ鼻を離してみると、ぷすっと鼻から息を吐きいびきが止まっただけで、起きない。
自分に向けられる日頃のびりびりとした舐めまわすような視線は、自分を抱きたい男のものなのか
または、娼婦だった自分を疎ましく思う男のそれなのか、確かめるつもりだったは、気を張っていた分
ゾロの寝入りように拍子抜けをしてしまった。
ゾロの横に座っているだけで、股間が潤う。それどころか、したくって居ても立ってもいられないは
ゾロの顎先を、中指の先で触れるか触れないかでなぞる。かなりくすぐったいはずなのだが、それでもゾロは起きない。
ため息をひとつ吐き、指先を喉から胸元にすべらせ、は、ゾロの傍を名残惜しそうに離れていった。
すべるような足取りで、の足音が、遠ざかっていく。
ラウンジのドアが開け締めされた音を確認したゾロは、強硬なる意思を持って固く閉じていた目を開けた。
ゾロの股間は、見事なまでに勃っていた。もう少し、がゾロを刺激していたら、ゾロ本人が望もうと望むまいと
関係なしに、本能のまま組み敷いていただろう。
ゾロは、己の野望の前に女なしと決めた自分自身と、肉体が反応を描く自分自身の前に大いに鬱積を募らせていた。
の裸体が脳裏から離れない。それどころか、日を追うごとに鮮明に浮かび上がってくる記憶。
日長、目の端に留めるどころか、知らぬうちに己の視線はを追っている。
これでは、サンジの言うとおりのむっつりすけべではないかと、己の行状に嫌気がさしていた。
それが、ただ挿れたいだけなのか、サンジのいうように愛したいのか?
抱きたいには抱きたいが、それをするのが己の中で正しいことなのか?
欲望だけで突っ走るのは、剣士たる己のすることなのか?
などと、己の中にくすぶるものの正体が掴めずにいた。
痛いくらいにいきり立つ分身を、取り出し、おまえはちょっとは辛抱できんのか!と思いながら、しごきだす。
毎晩のように、白濁した液を右手で搾り出しているのに、この剣士の分身は別の意思を持つかのように
日に何度も、鎌首を持ち上げる。
幸いな事に、クルーは船を離れた。も、先ほどの様子では、小一時間は近寄ってこないだろうとふんだゾロは
思う存分、分身をしごいた。ほどなくして、みかんの木に青臭い液体が降り注がれた。
その一方、女部屋のベッドに寝転び、はゾロの逞しい体躯を思い浮かべていた。
鍛え上げられた肉体は一種独特の美を持つ。あの筋肉が極限まで緊張するさま。自分を抱いたら、どう動くのだろう。
躍動する筋肉の動きは、私にどう伝わるのだろう。
ゾロの体躯を思い浮かべるだけで、体は蕩けだし内なる部分が潤いをおびていく。
は、おもむろに、胸元をはだけた。ぶるんと形のいい乳房が解放され先っぽがきゅっと硬くなる。
脳裏にゾロの体躯を思い浮かべながら、乳房をもみ指先で乳頭をつまみ上げる。
「んあっ」
――こ、声が出ちゃう……。ゾロ、寝てるから大丈夫かな
ジンジンと体が熱をおびていき、股間が燃えるように疼く。乳房だけへの刺激では我慢しきれず、の手は
ショーツの中に入り込む。
“くちゅり”
――あっ濡れすぎ……。
股間は湿っているどころではなく、分泌された液体の多さに、は自ら煽られていった。
指をクレバスに沿って這わしているだけなのに、液は量を増していく。指先に粘液がまとわりつき、淫猥な音を奏でる。
声を押し殺し、夢中で指で花芯をいたぶる。一本だけだった指が二本三本と増えていくごとに声が漏れ出していくのだったが、
は気がつかなかった。
ただ、自分の欲望を自慰行為で発散させるべく、夢中で指を進めていった。
その頃、みかんの下での自慰行為を終えたゾロは、喉が渇き、確か誰も手を出さない俺専用の酒があったはずだと倉庫に降りていった。
「ン……あっああ、ゾロ……ゾロ」
鼻にかかった甘ったるい声が自然に、ゾロを呼ぶ。
倉庫ないを漁るうちに、自分を呼ぶの声が聞こえ、ゾロはぎょっとした。
の姿の見えないのは、てっきり寝ているものだと思ったのに、起きている。
しかも、己を呼ぶ声は艶めかしく。そう、あの時覗き見した嬌声と、変わらぬものだった。
そっと、女部屋に続く階段をふさぐフタを開けてみると、開く。首だけをぬっと突っ込んでみると、そこには、夢にまで見た裸体。
脳裏から離れない乳房とさくらんぼうをもみ、大きくひろげた脚と股間にそえられた手を夢中で動かすがいた。
ゾロの欲望を放出したばかりの分身が、瞬時に反応し天を睨む。
慌てたゾロは、起き上がろうとするのだが、痺れたように体は動かず、かがんだ腹に、ピクピクと小刻みに分身があたるだけだった。
は、自分がゾロの名を口にしたことすら分からず、おさえていた声すらもはや抑えようとせず、自慰行為に耽っていった。
ゾロが覗いていることすら気がつかなかった。
初めて見る女の自慰行為は、ゾロを釘付けにした。だらだらと先走りの汁が下着に沁みこんでいく。
手による刺激などなしでも充分なほど目に受ける刺激は、ゾロの分身から早急な放出を願わせた。
から目が離せず、首だけを階段から覗かせ苦しい体制を保ちながら、自らの分身をしごく、緩急をつけて。
剣士たるもの云々は、ゾロの中から完全に閉め出されていった。
無我夢中で、を舐めまわし、の中に、己をくい込ませ何度も何度も浅い高みに押し上げ
声を揚げさせているのはおれだという錯覚。
乳房をもむ手はゾロのごつごつとした大きな手と、花芯をいたぶりながら蜜壷を出し入れする指はゾロの節くれ立った指と
妄想し、何度も何度も浅い恍惚を覚えながら、はなりふり構わずゾロの名を呼ぶ。
甘い響きを持つ自分の声に、さらに、煽られながら堕ちていく。
――ゾロ〜イッちゃう…うぅ……ん
は、押し殺した声とともに、ひくんと腰が浮き上がりずるずると崩れ落ちた。
その瞬間を待っていたかのように、ゾロの分身も、ドクドクと白獨した精を吐き出した。
何度も浅く繰り返しイッた果てに、深くイけるのは自慰行為の為せるわざで、はうっとりとしたため息を吐き
けだるさの中、眠りに引き込まれていった。
ゾロもまた、むせかえるような栗の花の匂いに包まれ、ずるずると眠りに落ちていった。
2004/12/17
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